寺子屋スジャータ

黄金のハンサ鳥(ジャータカ 第136話)

再話:藤本 竜子
絵 :ただ りょうこ

2020/11/29開催 第4回オンラインこども仏教教室より

黄金のハンサ鳥:ジャータカ物語

むかしむかしのおはなしです。
あるところに、おおきくてうつくしいハンサちょうがおりました。
ハンサちょうとはかみさまのお使つかいとわれているとりです。
しかも、そのハンサちょうはねは、なんとおうごんでした。
このおうごんのハンサちょうにはとくべつのうりょくがありました。ぶんぜんとおちからがあったのです。

おうごんのハンサちょうは、そのちから使つかって、ぶんまえせいでどのようにくらしていたのかをてみました。すると、ぶんにんげんだったことがわかりました。にんげんだったときぞくのこともわかりました。
「あのぞくいま、どうしているだろうか。げんだろうか。わたしがいなくなって、どうやってくらしているだろうか。」
そうかんがえて、おうごんのハンサちょうはもとんでいたむらってみました。

むらでは、ぶんにんげんとしてきていたときのおくさんとさんにんむすめがくらしていました。
しかし、かのじょらはとてもまずしいくらしをしていました。だいこくばしらのおとうさんがくなり、いえはすっかりおちぶれました。さんにんむすめたちはそれぞれ、よそのいえにやとわれて使づかいのようなことをして、ようやっとくらしをてていました。

それをて、おうごんのハンサちょうかのじょらをかわいそうにおもいました。
そしてかんがえました。
わたしはねおうごんだ。このはねいっぽんずつけることができる。このはねをあげれば、つまむすめたちはらくにくらしていけるだろう。」
かれんでって、もとのいえのはりのはしっこにとまりました。

むすめひとがハンサちょうつけました。
「まあ、なんてうつくしいとりでしょう。」
ほかのふたりのむすめもやってきました。
「あらまあ、かみさまのおつかいがやってきたわ。どうぞこちらへおいでください。」
おうとりさん、こっちへおいで。」
と、やさしくよびかけました。

おうごんのハンサちょうは、さんにんむすめのところにりてました。
むすめたちはおおよろこびで、はなしかけたり、そっとはねをなでたり、どうやってとりにやさしくしようかといっしょうけんめいでした。
つまもやってて、にんおうごんのハンサちょうかこんで、くちぐちはなしかけました。
むすめひと
「あなたさまはどちらからたのですか?」
こえをかけました。

黄金のハンサ鳥:ジャータカ物語

すると、おうごんのハンサちょうにんげんのことばではなしました。
わたしは、おまえたちのんだちちおやまれわりなのだよ。ここでんで、ハンサちょうまれたのだ。」
「おとうさん! おとうさんなの? わたしたちにいにてくれたの?」
むすめたちはとてもよろこびました。

「おまえたちがくるしいせいかつをしているのをたのだよ。
わたしはおまえたちに、このはねいちまいあげよう。これは、きっとたかれるだろう。これをって、らくにくらしなさい。」
おうごんのハンサちょうはそうはなすと、はねいちまいいて、かのじょらにわたしました。

黄金のハンサ鳥:ジャータカ物語

にんはそのはねたいせつにあつかって、まちってってりました。

はねはとてもよいだんれました。
つまむすめたちは、ひさしぶりにおいしいごちそうをおなかいっぱいべて、あたらしいふくうことができました。
「おとうさんのおかげだわ。」
にんよろこびました。

それからも、ときどきおうごんのハンサちょうはやってました。
そしてまいかいはねいちまいいて、かのじょらにあげました。

はねはいつもたかだんれましたから、つまむすめたちはだんだんゆたかになりました。
せいかつらくなりました。

そんなあるははおやむすめたちにこういました。
「おとうさんがはねをくれるのはいいんだけど、なんでいつも、いちまいずつなのかねぇ。もっとたくさんくれたら、わたしたちはもっとかねちになれるのにねえ。」
むすめはびっくりしました。
「おかあさん、もうじゅうぶんです。わたしたちはぞくそろってらくにくらしています。もうじゅうぶんしあわせです。これじょうはいらないわ。」
「なにをってるの。おかねはいくらあってもいいでしょう。たくさんあるにこしたことはありませんよ。たくさんはねがあるんだから、たくさんもらっちゃえばいいのよ。れるものはっておかないと。」
むすめたちはさおになりました。
「そんなことしたら、おとうさんがきっといたいわ。いけないわ。」
ははおやむすめうことはきません。

黄金のハンサ鳥:ジャータカ物語
「そんなことっても、とりのことだから、わって、いつここになくなっちゃうか、わかったもんじゃないよ。そうなったら、たくさんあるはねをもらわないままになってしまうでしょ。どうせもらうものなんだから、さきに、いちにもらっちゃえばいいのよ。」
「そんなのかなしいわ。おとうさんがわたしてくれるものでじゅうぶんよ。おとうさんがかなしむことはしちゃいけないわ。」
はねをいただくだけよ。ころしはしないわ。そこにあるものをれてなにわるいの? あのはねぜんあれば、わたしたちはおおがねちになれるのよ。」
ははおやむすめたちがひっめても、みみをかしませんでした。

そして、つぎおうごんのハンサちょうたとき、かのじょはいきなりかれをつかまえて、すべてのはねいてしまいました。

おうごんのハンサちょうはねは、かれではなく、ぼうりょくによってかれました。
おうごんかがやいていたはねは、ぜんぶ、まっしろなふつうのガチョウのはねになってしまいました。

黄金のハンサ鳥:ジャータカ物語

はねのなくなったハンサちょうぶことができません。いたみをこらえてぐったりしています。
ははおやしたちしながら、かれをかごにめてエサをれておきました。
つぎはねがはえてくるのをっていたのです。

しばらくして、ハンサちょうあたらしいはねががはえてきました。
しかし、それはまっしろいものでした。

黄金のハンサ鳥:ジャータカ物語

むすめたちはきながら、ハンサちょうをかごからしました。
ハンサちょうがり、んでぶんまいにかえりました。
それからかのじょらのいえもどってくることはありませんでした。

黄金のハンサ鳥:ジャータカ物語

ははおやは、よくふかのせいで、ぶんおうごんまでうしなってしまうことになりました。
また、かのじょのせいで、むすめたちもられないことになりました。

 

しゃさまおし

たくさんのものがはいときがあります。
そのときぶんにとってちょうどよいぶんりょうについて、わかっているようにしましょう。
ちょっとしかに入はいらないときがあります。
そのときぶんにしたそのままに、ることができたそれだけで、まんぞくこころつくりましょう。
それじょうのものはのぞむべきではありません。

られたものでまんぞくすべき。
よくばりはわるいこと。
おうごんのハンサをつかまえても、
おうごんはあなたからげていく。

(おしまい)

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