寺子屋スジャータ

人格診断テストのおはなし(ジャータカ 第305話)

再話:藤本 竜子
絵 :ただ りょうこ

2021/1/10開催 第6回オンラインこども仏教教室より

 

むかしむかし、バーラーナシーというみやこで、ブラフマダッタおうくにおさめていたときのおはなしです。

とうゆいしょあるいえがらわかものたちは、大人おとなになったらいえぐのがならわしでした。

だいだいつづいてきたいえしゅじんとして、ぎょういとなむのです。それができるようになるためには、たくさんのべんきょうをして、いろいろなことをにつけて、しっかりしたにんげんにならなければなりません。
べんきょうのために、わかものたちはせんせいのところにりして、がくせいとなります。
せんせいのことはしょうとして、とてもうやまいます。しょうのところでらしながら、いろいろながくもんほうやしつけをおしえていただきます。ごとのためにひつようなことも、にんげんとしてひつようなことも、すべておしえていただきます。しょうのおをしたり、いつけをまもったりすることもべんきょうです。

バーラーナシーのみやこに、あるしょうがいました。そのしょうはすぐれたしょうとしてゆうめいでした。みやこだけでなく、ほうぼうにそのしょうまえこえていましたので、みやこからとおはなれたところからも、たくさんのわかものとしてまなびにやってました。このときには、ひゃくにんものわかものが、そのしょうのもとでらしていました。

さて、そのしょうにはむすめがいました。ちょうどとしごろになって、けっこんあいを探すことになりました。しょうは、むすめがおよめってしあわせにらしていくためには、どんなあいがふさわしいだろうかとかんがえました。

ジャータカ第305話:人格診断テストのおはなし

かおかたちがうつくしく、からだがたくましいひとだろうか。
かねちがいいだろうか。
あたまがいいひとだろうか。
それともすぐれたじんかくのある、どうとくについているひとだろうか。

そのしょうは、じんかくいちばんだいだとかんがえました。
しあわせにきていくためには、なによりもじんかくたいせつだ。よし、わたしひゃくにんたちのなかで、どうとくがそなわったりっじんかくものに、むすめけっこんさせるとしよう。」
めました。
ではどうやって、すぐれたじんかくかどうか、きわめればよいのでしょう。
しょうはひとつのテストをしてみることにしました。このテストで、たちにどうとくがそなわっているのかどうかを、しんだんしてみることにしたのです。

しょうは、ひゃくにんわかものたちをあつめて、こういました。

ジャータカ第305話:人格診断テストのおはなし
「きみたち。わたしむすめとしごろになったので、わたしはあれをよめりさせようとおもっておる。しかし、よめりさせるには、しょうやアクセサリーがひつようじゃ。わたししょうやアクセサリーをようしようとおもうのじゃが、きみたちにひとつきょうりょくしてもらいたい。
きみたちはぶんしんるいのところから、だれにもつからないように、しょうやアクセサリーをぬすして、ってるのじゃ。
よいか、だれにもつかってはならんぞ。わたしは、だれにもられずにってきたものだけをろう。だれかにられてしまったら、それはっててもらぬからな。」

たちはみんな、りっしょうのかわいいむすめさんをおよめさんにほしいとおもっていました。
ですから、しょうのこのはなしくと、「わかりました。」とって、それぞれしんるいのところにき、だれにもつからないように、しょうやアクセサリーをぬすんでました。そして、それをしょうのところにってました。

ジャータカ第305話:人格診断テストのおはなし

たちがつぎつぎってしょうやアクセサリーを、しょうりました。そしてしょうは、ったしょうやアクセサリーがざってしまわないようにして、きちんとべつべつたいせつかんしておきました。

そのようにして、たちはつぎからつぎへとしょうやアクセサリーをぬすんでたのですが、たったひとなにってないがいました。
しょうはそののことがとてもになりました。
「これは、どうしてもあのわかものに、なぜなにってないのかを、たずねてみなければならんぞ。」
そうおもって、しょうわかものびました。

「あー、きみ。きみはわたしのところに、しょうもアクセサリーも、なにひとっててはおらんね。」
わかものはこたえました。
「はい、おしょうさま。さようにございます。」
「それはいったい、どういうゆうがあるのかな?」

ジャータカ第305話:人格診断テストのおはなし「はい、おしょうさま。おしょうさまは、しょうやアクセサリーを、だれにもられないように、ぬすしてってるようにとおっしゃいました。だれかにられたものは、おりにならないのだと。」
「ふむ。そのとおりじゃな。」
「はい。ですがわたしは、わるいことをしてかくしとおせるということは、ありえないことだとおもうのです。」
「ほう、おまえはそうおもうか。」
「はい、おしょうさま。いくらかくれてだれにもられないようにとわるいことをしても、なかではかくしとおせるものではありません。『だれにもられないようにするぞ』とおもったとしても、こちらがらないだけで、だれかが、なにかが、ているものでございます。ひっそりとしたもりなかでも、わたしたちにはえないだけで、せいれいたちがているかもしれません。かくしとおせるとおもうのは、おろか者もののかんがえだとおもうのです。
しょうさまわたしにはかくしごとなど、かんがえることもできません。
だれていないしょなどありえません。
たとえだれもいなくても、それならわるいことをしてもいいとは、わたしにはおもえないのです。
だれもいないしょであっても、わたしにとってはかくれていることにはならないのです。」

ジャータカ第305話:人格診断テストのおはなし「そうかそうか。」
わかものはなしいて、しょうまんめんがおでうなずきました。
「きみ。きみのうとおりじゃ。
じつは、わたしはきみたちをためしたのじゃよ。わたしいえざいさんがないわけでもないのじゃ。だがわたしは、むすめしあわせをねがい、どうとくがそなわった、すぐれたじんかくにんげんとつがせたいとおもったのじゃ。
それで、たちのなかだれじんかくをそなえたものであるかと、しんだんするためにこんなことをしたのじゃ。
きみこそがふさわしい。きみはすばらしいじんかくひとだ。わたしむすめはきみにさしあげたい。」
しょうはそうって、おおよろこびで、むすめをそのわかものとつがせることにめました。

それから、しょうはそのほかのたちにもじょうせつめいし、みながってたものをひとひとかえして、それぞれかえらせました。

ジャータカ第305話:人格診断テストのおはなし

じんかくができていないたちは、むすめけっこんすることはできませんでした。どうとくがそなわっているすぐれたじんかくが、けっきょくは、むすめけっこんすることができました。

ジャータカ第305話:人格診断テストのおはなし

このものがたりの、どうとくをそなえたわかものは、おしゃさまぜんのお姿すがたです。ボサツとしてしゅぎょうされていたときも、このようにどうとくまもり、しんかってつとはげまれたのでした。

 

 

メッセージ

だれていないからといって、わるいことをするのは、とてもかっこわるいことです。
とてもずかしいことです。
そんなことをするひとには、しんかいかってあるくことはできません。

わるいことをかくしとおすことはできません。
どこであっても、だれかがています。だれかがづきます。
だれていないしょはありません。
えないせいめいているかもしれません。
だれもまったくていなくても、ぶんています。
ぶんは、ぶんわるいことをしたことをっています。
だから、だれにもられないしょはないのです。

すぐれたじんかくの人ひとはだれていなくても、わるいことはしません。

では、ぶんわるいことをしてしまったときは、どうすればよいでしょうか。

だれらないからといって、やったことがなかったことにはなりません。
もし、だれづいていなくても、わるいことをしてしまったら、さんげしてあやま
りましょう。
ぶんがやってしまったあやまちを、きちんとひとつたえてあやまることは、とても
たいせつなことです。それはよいおこないです。ゆうがいるかもしれません。しかし、き
れいなこころになります。せいちょうすることができます。

(おしまい)

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