寺子屋スジャータ

キンスカの木を知っているか !?(ジャータカ 第248話)

再話:藤本 竜子
絵 :藤本 ほなみ

2021/10/10開催 第15回オンラインこども仏教教室より

 

むかしむかしのおはなしです。

バーラーナシーのみやこでは、ブラフマダッタおうくにおさめていました。
ブラフマダッタおうにはにんむすたちがおりました。

あるのこと、にんおうたちはおしろのひとところにあつまって、おしゃべりをしていました。そのとき、あるのことがだいになりました。そののなまえは「キンスカ」といいます。おうたちはみんな、そののなまえはっているのですが、にんのうちだれも、キンスカのたことがありません。
「いったい、キンスカっていうのは、どんななんだろう?」
「どんななのか、そうぞうもつかないや。」
いっかいてみたいものだね。」
「じっさいにてみたら、はっきりわかるよね。」
そんなはなしをしているうちに、にんはキンスカのをとてもてみたくなりました。

そこで、おうさまぎょしゃをよんで、こうたのみました。
「じつは、ぼくたちはキンスカのいちてみたいとおもっているんだ。あなたはぼくたちがキンスカをれるように、キンスカのえているところへ、ぼくたちをれてってくれないかい?」
ぎょしゃは「いいですとも。おうさまがた。きかいをつけて、おれいたしましょう。」とひきうけてくれました。

そのことばどおり、ぎょしゃおうたちをキンスカのえているもりへ、れてってくれました。しかし、にんいっしょにではなく、いっかいひとずつれてってくれたのでした。

さいしょいちばんうえおうれてってもらいました。ぎょしゃおうくるませて、キンスカのえているもりくと、
おうさま、これがキンスカでございます。」とおしえてくれました。
おうると、おおきなっています。が、がというよりは、なんだかげたはしらみたいにえました。
「へえ、そっかあ! これがキンスカかぁ!」
おうはキンスカのをよくて、どんななのかおぼえました。

ジャータカ第248話:キンスカの木を知っているか !?

 

つぎにばんめのおうれてってもらいました。それは、いちばんめのおうったときからはしばらくたっていました。
おうさま、これがキンスカでございます。」とぎょしゃおしえてくれました。
おうると、おおかぶに、おおきくてまっはながたくさんいていました。
「へえ、そっかあ! これがキンスカかぁ!」
おうはキンスカのをよくて、どんななのかおぼえました。

ジャータカ第248話:キンスカの木を知っているか !?

 

しばらくして、さんばんめのおうれてってもらいました。
おおきなにたくさんのいしげっていました。
おうさま、これがキンスカでございます。」とぎょしゃおしえてくれました。
「へえ、そっかあ! これがキンスカかぁ!」
おうはキンスカのをよくて、どんななのかおぼえました。

ジャータカ第248話:キンスカの木を知っているか !?

 

またしばらくして、こんどはよんばんめのおうれてってもらいました。
にはができて、まめのはいったさやがたくさんぶらさがっていました。
おうさま、これがキンスカでございます。」とぎょしゃおしえてくれました。
「へえ、そっかあ! これがキンスカかぁ!」
おうはキンスカのをよくて、どんななのかおぼえました。

ジャータカ第248話:キンスカの木を知っているか !?

 

それからまたしばらくたちました。にんおうたちがあつまっているときに、キンスカのはなしになりました。
いちばんめのおうは、
「キンスカはげたはしらみたいだよね。」といました。
ばんめのおうは、
「いやいや、おにくったのみたいだよ。」といました。
さんばんめのおうは、
みどりいっぱいので、ニグローダのたいぼくみたいだよ。」といました。
よんばんめのおうは、
「さやがいっぱいぶらさがっていて、ねむの 〔シリーサ〕みたいだよ。」といました。

にんはおたがいのはなしがまったくっていないので、これはいったいどういうことだろうかとおもいました。いくらはなしっても、それぞれがうキンスカというのようすが、みなちがっていて、いっちしません。どうもまったくちがうもののようなのです。しかし、にんおうは、みな、ぶんでキンスカのましたし、しっかりとのようすをて、おぼえてきたはずなのです。
ぎょしゃおなもりおなじキンスカのせてくれたはずです。それなのに、なぜこんなに、それぞれうことがちがっているのか、わけがわかりません。
そこで、にんは、あるおうさまであるおとうさまにたずねることにしました。

にんおうたちは、おうさまのところへって、
「おとうさま、キンスカというのは、いったいどのようななのでしょうか?」とききました。
おうさまおうたちはなしにをよくきました。

おうたちは、キンスカのをそれぞれったこと、それぞれがたものをしっかりとおぼえてかえったこと、どんなだったかをにんはなしってみたら、おたがいにぜんぜんちがっていたことをはなしました。

ジャータカ第248話:キンスカの木を知っているか !?

 

おうさまは、
「では、キンスカのについて、おまえたちはどのようにはなしたのかい?」とたずねました。
いちばんめのおうは「げたはしらみたいなものです。」
ばんめのおうは「おにくみたいなものです。」
さんばんめのおうは 「ニグローダみたいです。」
よんばんめのおうは「ネムノキみたいです。」
にんはそれぞれぶんてきたようすをいました。
おうさまはそれをいて、こうはなしました。
「たしかに、おまえたちにんとも、キンスカをたのだ。
キンスカのは、ふゆのあいだれたようにえるが、はるになるとしんし、まずあかはなくのだ。はなのあとで、いしげり、あきにはっぱはちて、がつくのだよ。だから、まったくちがうようにえても、どれもおなじキンスカのなのだよ。
だから、おまえたちにんとも、まちがったことはっていない。それぞれただしいことをっているよ。
だがな、ひとつわすれていたことがあったのだよ。ぎょしゃがおまえたちに『これがキンスカのだ』とせたとき、おまえたちは『これはどういうのキンスカでしょうか?』とはたずねなかったね。『このにはどうでしょうか』『このころはどうでしょうか』とべつしてたずねなかったね。だから、わからなくなってしまったのだよ。いろいろなについて、たずねていれば、もんにはならなかっただろうね。」
おうさまおうたちにそうおしえてくれました。

 

おはなしのポイント

  • にんおうたちはそれぞれ、あるのキンスカをました。それはまちがっているわけではありません。たものはそのとおりです。
  • でも、ぶんたものがキンスカのすべてだとおもうと、それはちがいます。
  • によって、キンスカはまったくちがったようすになります。ふゆれたようなじょうたい、まっおおきなはないているようす、はながすぎて、あおあおがしげっているたいじゅのようす、そして、まめのさやがずらりとぶらさがっているのようす。おなだとはわからないほどのへんしんぶりです。
  • おうたちは「へえ、そっかあ!」とぶんたものだけをおぼえておきました。ぶんたものだけで、になって、ほかそくめんがあることをろうとかんがえていなかったのです。
  • ぶんてたしかめたじょうほうであっても、「へえ、そうですか」とただインプットするのではなく、ぜんたいなかで、どういうじょうほうなのかまでたしかめておくことがたいせつです。
  • ひとは、ぶんたこと、いたことがただしい、それがすべてだとおもいがちです。しかし、じっさいにはそうではありません。
  • ぶんじょうほうは、いつでもぶんてきです。ぶんったものがすべてではない、とっておきましょう。
  • ぶんにはえていないぶんもあることをっって、ぜんたいっろうとするりょくひつようです。
  • ぜんたいりたければ、があり、ものごとをありのままにることができるひとに、たずねてみるとよいでしょう。

(おしまい)

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