寺子屋スジャータ

シカとキツツキとカメの友情(ジャータカ 第206話)

再話:藤本 竜子
絵 :藤本 ほなみ

2020/8/23開催 第1回オンラインこども仏教教室より

シカとキツツキとカメの友情|ジャータカ第206話

昔々むかしむかし、あるもりに、シカがくらしていました。
そのもりにはきれいないけがあって、そこにはカメがんでいました。
いけのそばのおおきなには、キツツキがをつくっていました。
シカは毎日まいにちいけみずみにき、 そこでカメとキツツキに出会であって、ともだちになりました。
シカとキツツキとカメは、毎日まいにちって、なが時間じかんいろんなはなしをしました。とてもなかよく、たのしくらしていました。

ある一人ひとり猟師りょうしもりなかをあちこちあるまわるうち、あのいけつけました。
いけのほとりをあるいていた猟師りょうしは、地面じめんについたシカの足跡あしあとつけました。
「これはなかなか立派りっぱなシカではないか。こいつをしとめてやるとしよう。
きっと、このいけみずみにるにちがいない。では、このあたりにわな仕掛しかけておこう。」
そうって、てつくさりぐらい丈夫じょうぶかわひもでできたわな仕掛しかけてかえってきました。

夕方ゆうがたおそく、シカがいけにやってきました。
はやともだちにいたいな。」とおもいながら、ぴょんぴょんとびはねながらはしってきました。

いけがすぐそこにえてきたとき、いきなりあしなにかにつかまれました。
シカはびっくりして、おもわず悲鳴ひめいをあげました。
そのこえいて、いけからはカメが、うえからはキツツキが、あわててました。 ると、シカのあしわなにかかっています。かたいかわひものわながシカのあしをがっしりととらえています。
げようとしてひっぱると、あしがちぎれそうにいたくなりました。
猟師りょうしたら、きっとシカはころされてしまうでしょう。
「どうすればいいんだろう?」
シカとカメとキツツキはおたがいに見合みあわせました。

シカとキツツキとカメの友情|ジャータカ第206話

キツツキがわなをよく観察かんさつしてました。
「これは、このかわひもをるしかなさそうだよ。とてもかたそうだけど。
カメくん。きみにはがあるよね。きみなら、このかわひもをれるかも。
きみがっているあいだ、ぼくはんでって、猟師りょうし見張みはっているよ。そして、猟師りょうしがここへやってないように、がんばってみる。」
カメがすぐにいました。
「よし、そうしよう。」
カメとキツツキは 「ちからわせてえよう。」
とシカをはげますと、すぐに仕事しごと開始かいししました。
カメはすぐさまかわひもをはじめました。
キツツキは猟師りょうしんでいるむらんできました。

よくあさはやく、あの猟師りょうしおのって、いえからきました。仕掛しかけたわなくつもりです。
すぐさまキツツキはおそろしいこえをあげながら、そらから猟師りょうしをめがけて急降下きゅうこうかして、かお体当たいあたりしてりました。
猟師りょうしは、いえからようとした瞬間しゅんかんにわけもわからないことがこり、
「なんなんだ?今日きょう縁起えんぎわるいぞ。」といったんいえなかもどりました。
キツツキは、かんがえました。
猟師りょうしはさっきいえおもてからてきたな。つぎはきっと裏口うらぐちからてくるだろう。」
それで、今度こんどいえうらにひそんでちました。

猟師りょうしは、しばらくいえなかやすんでいましたが、をとりなおして、こうかんがえました。
「さっきはいえからたとたん、不吉ふきつとりにやられてしまった。今度こんどうらかられば大丈夫だいじょうぶだろう。」
そこで、裏口うらぐちからそっと、あたりをうかがいながらてきました。
一歩いっぽそとたとたん、キツツキはおそろしいこえをあげながら、猟師りょうしあたまうしろから 体当たいあたりしてりました。
猟師りょうしおそろしくなって、あわてていえなかかえし、
「ああ、今日きょうはツイてないや。」
と、ふとんをかぶって、もう一度いちどねむってしまいました。

シカとキツツキとカメの友情|ジャータカ第206話

猟師りょうしふたたをさますと、もうたかくのぼっていました。
猟師りょうしきて、おのをしっかりとにぎりしめました。
「もうかねばならん。今度こんどこそ、ってやるぞ。あの不吉ふきつとりがおそってきたら、このおのでたたきってやる。」
猟師りょうし今度こんどは、おのまわしながら、いえからてきました。
キツツキには、もうこれ以上いじょう猟師りょうし足止あしどめさせておくことができないことがわかりました。
そこで大急おおいそぎで、もりなかいけかってんでき、シカとカメのところへりました。
カメはわずかなかわひもをのこして、あとは全部ぜんぶってしまっていました。
でも、カメのはボロボロになっていて、くちまみれになっていました。
猟師りょうしがやってるよ!」
とキツツキがさけび、カメは最後さいごのがんばりでかわひもをみました。
シカもあしちかられてりました。とうとうかわひもがれました。
そのときにはもう、猟師りょうしおおまたでズンズンちかづいてくる姿すがたえました。
シカはさっとをひるがえしてもりなかへかけてきました。
キツツキはたかにとまってをかくしました。
カメはうごちからがなくて、そのにじっとうずくまりました。
わながこわされて、シカがげてしまったとわかると、猟師りょうしはかんかんにおこりました。
足踏あしぶみをしてくやしがりました。
そこで、そのにいたカメをつけると、えものをれるふくろにほおりこんで、にぶらさげてしまいました。
そして、シカをさがしてあたりをあるはじめました。

シカはそっともどってきていました。カメとキツツキのことが心配しんぱいだったからです。
しげみのかげからて、カメがつかまってふくろれられたのがシカにわかりました。
「カメくんをたすけなきゃ!」

シカは、猟師りょうしえるところに姿すがたすこしあらわして、あしきずってあるきました。
猟師りょうしはそれをて、シカがケガをしているとおもいこみました。
「しめしめ、こいつはよわっているな。これなら簡単かんたんにしとめられるぞ。」
そうおもって、おのをにぎって、シカをいかけました。
シカはつかまりそうなぐらいにせてははなれ、またせては、またすこはなれ、というようにして、もりなかふか猟師りょうしをさそいこみました。
かなりとおくまできたところで、シカは、さっとひとっとびで姿すがたをくらまし、かぜのようにまっしぐらにかとんではしって、いけのところにもどりました。

キツツキはカメがれられているふくろのそばで、心配しんぱいそうにっていました。
シカは、つのでふくろをつきさしてげると、地面じめんろしました。ふくろあながあきました。
キツツキもふくろをつついてやぶりました。
カメはふくろからることができました。

シカとキツツキとカメの友情|ジャータカ第206話

シカは、
「カメくん、キツツキくん、ぼくのいのちはきみたちがすくってくれた。きみたちともだちがいなかったら、ぼくはんでいた。きみたちにどれほど感謝かんしゃしていることか。本当ほんとうともともだちがいて、ぼくはうれしいよ。」
なみだぐみました。
キツツキとカメも、
「シカくん、きみが無事ぶじで、ほんとによかったよ。」
なみだぐみました。

でも、ゆっくりしているひまはありません。
シカがいました。
「そうだ。あの猟師りょうしがいつここへもどってるかわからない。つかまらないように、まずはをかくさないといけない。カメくんはみずにもぐるんだ。キツツキくん、きみもつからないようにね。」

猟師りょうしもどってきたとき、そこにはだれもいませんでした。
猟師りょうしはこわれたわなやぶれたふくろひろって、とぼとぼといえかえってきました。

シカとカメとキツツキは、あのいけからもっと安全あんぜんべついけにひっこしをしました。
そして、生涯しょうがい、なかよくたすってらしました。

シカとキツツキとカメの友情|ジャータカ第206話

このおはなしのポイント

よいともだちは、こまっているとき大変たいへんときに、おあたがいにたすいます。

しんともとは

  1. たすけてくれるともだち
  2. よろこびもかなしみもともにしてくれるともだち
  3. いアドバイスをしてくれるともだち
  4. おもいやりのあるともだち

(おしまい)

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