今週の偈 2025.5.12
面白いことに、私たちは自由を目指して、新たな束縛を作ります。この新たに作る束縛がかなり破りにくいものになります。この自由と束縛はヒルという生き物が移動するときの動作に似ています。ヒルはまず口で何かを掴んで、後ろの体を引き寄せる。何かを掴まないとヒルは動けないのですね。私たち人間もヒルと同じように何かの束縛を掴むことで次へ動くことを繰り返しているのではないでしょうか。人間は自由になろうと思って、今感じた束縛を破って、新たな束縛を作る。その束縛に気付いたら、その束縛を破って、また新たな束縛を破る。だから新たな束縛がなければ、今の束縛を破れない。次の不自由がないと、今の不自由から逃れられない。でもいくら束縛を破っても自由にならない。問題はこの方法で我々はいつか自由になるのかということなのですね。それはまるで輪廻のように繰り返されています。だから自由を求めるなら、人間の五感に入る情報で組み立てられた主観的な世界を破って、次元を超えて考えたほうがいいとお釈迦さまは説かれたのですね。
アルボムッレ・スマナサーラ+ハナムラチカヒロ
慈しみ主義ーブッダの科学が描くもうひとつの地球 河出書房新社より