寺子屋スジャータ

親孝行のオウム(ジャータカ 第484話)

再話:藤本 竜子
絵 :藤本 ほなみ

2020/9/13開催 第2回オンラインこども仏教教室より

昔々むかしむかし、お釈迦しゃかさま前世ぜんせでオウムの王様おうさま息子むすこ としてまれました。

とうさんの王様おうさまオウムがとしをとってきたとき息子むすこにこういました。
わたしとしをとったので、もうとおくにんでいくことができなくなった。今日きょうからはおまえおうである。おう仕事しごとをしっかりやっておくれ。れの面倒めんどうをよくるんだよ。」

わかいオウムはれの王様おうさまになりました。
そのときから、わか王様おうさまオウムは、おとうさんとおかあさんがエサをさがしにんでかなくてもよいように、いつもべるものをさがしてはこんできました。
そして、たくさんのれのオウムたちがちゃんとべていけるように、れをれてって、十分じゅうぶんべさせました。

ある、エサをさがしてんでいくと、とてもこめがたくさんみのっているんぼがつかりました。
みんなよろこんで、そこでたくさんのこめべてかえりました。
みんなはべるだけべてただかえりましたが、王様おうさまオウムは、みのったこめがたくさんついている稲穂いなほをひとまとめにしてクチバシでくわえてってかえりました。

親孝行のオウム(ジャータカ 第484話)

なん日間にちかんか、そうやってそのんぼでおいしいこめべました。
んぼのぬしは、たくさんのオウムが毎日まいにちやって来て、みのったこめをかたっぱしからべてしまうのをて、
「これは大変たいへんだ。もうなんにちかしたら、こめがなくなってしまうぞ。」
おもって、んぼにワナをしかけることにしました。
どこにワナをしかけたらよいかと、オウムたちを観察かんさつしていると、れのなか一番いちばんおおきくて一番いちばんうつくしいオウムがにとまりました。
そのオウムは、わってれのみながとき自分じぶんだけ、クチバシに稲穂いなほたばをくわえていきました。
それをて、このおとこはとても不思議ふしぎおもいました。
「あの立派りっぱ姿すがたのオウムは、なんのために稲穂いなほをくわえていくのだろう。
十分じゅうぶんべたであろうに、どういうわけなんだ?」

それからまた、ワナの場所ばしょかんがえて、
「ここなら、あのオウムがってくるのではないか。」
おもわれる場所ばしょに、ワナをしかけておきました。

翌日よくじつわか王様おうさまオウムはたくさんのれをれて、んぼにやってきました。
そして、最初さいしょつと、そこにしかけられたワナにあしれてしまいました。
「しまった!!」
でも、こえすことをぐっとこらえました。
だって、いま自分じぶんさけんだら、れのみんなはおびえて、エサをべないままげてってしまうでしょう。
そうおもって、がまんしていて、みんながわったころに、
「つかまった!」
さけびました。

オウムたちは、びっくりして、こわくなり、みんなんでってしまいました。
ひとりになった王様おうさまは、さびしくてかなしくなりましたが、こらえてじっとっていました。

んぼのぬしおとこがやってきて、あのおおきくてうつくしいオウムがワナにかかっているのをると、おおよろこびで、王様おうさまオウムのあしをしばっていえれてかえりました。
おとこはオウムをすわらせると、自分じぶんきたかったことをたずねることにしました。

親孝行のオウム(ジャータカ 第484話)

「オウムよ、おまえはよほどのいしんぼうなのだな。きなだけこめべたあとで、さらにクチバシにいっぱい稲穂いなほをくわえてかえるのだからな。
いったいぜんたい、おまえのいえには穀物こくもつぐらでもあるのかい?
それとも、わたしうらみでもあってやっているのかい?
いったい、どこにこめめているのだ?」

おとこいをいて、王様おうさまオウムは人間にんげん言葉ことばでこたえました。
でもそのこたえは、なぞなぞのようなこたえでした。

わたしはあなたにうらみなどありません。
それから、穀物こくもつぐらってはいません。
はやしなかわたしいえがあります。
わたしはそこに稲穂いなほってかえります。
わたしには『りたもの』があります。
りたものをかえすことは、だいじな仕事しごとです。
それから『り』をあたえるのも仕事しごとです。
さらに、宝物たからものをたくわえます。
そういうわけで、わたし稲穂いなほってかえるのです。」

おとこは、オウムの立派りっぱけごたえにびっくりしましたが、こたえの意味いみはさっぱりわかりませんでした。
なので、して、さらにたずねました。

「オウムよ、『りたもの』とはなんのことだ。
りたものをかえす』とはどういうことなのだ?
りをあたえる』とはだれなにをどうすることなのだ?
それから、宝物たからものたくわえるとは、いったいどういうことだ?」

オウムはおとこ説明せつめいしてあげます。
わたしにはまだつばさえそろっていないおさなひなたちがおります。
そのらをやしなっていくことはわたし仕事しごとです。
わたしがそのらをべさせて面倒めんどうおおきくすることは、そのらにはそれは『してもらったこと』として、『りたもの』となります。
わたしどもらに『り』をあたえていることになります。
それから、わたしには年取としとった両親りょうしんがいます。
わたしちちははおおきくしてもらいました。
ですから、わたしは、わたしちちははに『りたもの』があるのです。
そういうわけで、わたし稲穂いなほってかえり、としをとってべなくなった両親りょうしんべさせて、わたしが『りたもの』をおかえしし、まだべないちいさなひなたちにべさせて、『り』をあたえるという仕事しごとをしています。

それから、ほかにもいるのです。
つばさいためてしまってべない仲間なかまや、病気びょうきよわっているオウムたちがいます。
わたしは、そのオウムたちにもものけてあげます。
そうすることは『たからかさねること』だとわれております。

このみっつはとても大切たいせつな『やるべきこと』です。
しっかりがんばれば、わたししあわせになります。
まわりもしあわせになります。」

おとこはじっといていました。
いているうちに、こころきよらかになり、とてもやさしいこころになりました。
そして、こういました。
「オウムよ、きみはすばらしくとくたかく、気高けだかとりだ。
人間にんげんなかにも、こんなにたか人格じんかくひと見当みあたらないよ。
わたしこころはとても感動かんどうした。
きみはオウムの仲間なかまれてきて、いつでもきなだけこめべなさい。
わたしきみとまたいたいし、えたらとてもうれしいのだよ。」

おとこはそうって、オウムのあしなわをはずして、きずついたところにやさしくくすりをつけてあげました。

きみわたし大切たいせつなことをおしえてくれた。
わたししあわせになったし、これからもっとしあわせになるだろう。
わたし幸福こうふくになるたからんでいくよ。」

そうって、おとこひろひろんぼをオウムにあげようとしました。
でも、王様おうさまオウムは、自分じぶんたちがべていけるだけのすこしの土地とち使つかわせてもらうことにしました。

「さあ、きみのご両親りょうしんがきっと心配しんぱいしている。はやかえって、安心あんしんさせてあげなさい。」
と、王様おうさまオウムを自由じゆうにしました。

オウムはクチバシに稲穂いなほをくわえてんでかえりました。
そして、無事ぶじよろこぶお父さんとお母さんと仲間なかまたちに、できごとをすべてはなしてあげて、いっしょによろこびました。

親孝行のオウム(ジャータカ 第484話)

このおはなしのポイント

おやそだててくれることはけっしてたりまえのことではありません。
とても苦労くろうして、いっしょうけんめいにそだててくれます。
それをおぼえていましょう。
両親りょうしんとしをとったらめんどうをみてあげることが、どものつとめです。
このつとめをたすことで、しあわせがおとずれます。

(おしまい)

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