寺子屋スジャータ

和合ってだいじ(ジャータカ 第33話)

再話:藤本 竜子
絵 :ただ りょうこ

2021/2/14開催 第7回オンラインこども仏教教室より

ジャータカ第33話:和合ってだいじ

昔むかし々むかしのインドのおはなしです。

あるところに、ウズラの森もりがありました。なん千ぜん羽ばものウズラたちがその森もりでにぎやかに暮くらしていました。
その中なかに王おう様さまウズラもいました。王おう様さまはとてもかしこかったので、むれは安あん全ぜんに暮くらすことができました。

ジャータカ第33話:和合ってだいじ

あるとき、ひとりのウズラとりがその森もりへ入はいってきました。
そのウズラとりはウズラの鳴なきまねがとてもじょうずでした。その男おとこが鳴なきまねをすると、ウズラたちは呼よばれているような気きになって、声こえのする方ほうに行いってしまいます。
ウズラが集あつまってくると、その男おとこはウズラたちの上うえに網あみを投なげます。ウズラたちが網あみの下したであわてている間あいだに、網あみのはしっこを持もってひきしぼります。そうすると、ウズラたちをいっぺんにたくさんつかまえることができるのです。

ジャータカ第33話:和合ってだいじ
男おとこはそうやってウズラをつかまえると、ひとまとめにかごにつめこんで持もって帰かえり、市いち場ばやあちこちに持もって行いって、売うりました。男おとこはそうやって、お金かねをかせいでいました。
男おとこは、その森もりでうまいぐあいにたくさんのウズラがとれるので、毎まい日にちその森もりにやってきて、たくさんのウズラをつかまえて帰かえりました。しばらくたつと、たくさんいたウズラたちは、だんだん数かずが減へっていきました。

ジャータカ第33話:和合ってだいじ

王おう様さまウズラは仲なか間まがどんどんつかまえられて連つれていかれるので、「これはなんとかしなければいけない」と、考かんがえました。そして、ひとつの作さく戦せんを思おもいつきました。
ウズラのむれを集あつめると、王おう様さまウズラはこう話はなしをしました。
「みんなも知しっているように、あのウズラとりの男おとこが毎まい日にちこの森もりにやってきて、私わたしたちの仲なか間まをつかまえていく。このままでは私わたしたちの仲なか間まはみな、いなくなってしまうだろう。このむれが滅ほろんでしまう。
私わたしは、あの男おとこにつかまらないようにする作さく戦せんを考かんがえた。
いいかい。あの男おとこはきみたちの上うえに網あみを投なげるだろ、そのとき、すぐにそれぞれ自じ分ぶんの場ば所しょで、網あみの目めに頭あたまをつっこんで、いっせいに飛とぶんだ。そうやれば網あみは持もち上あがるから、そのまま運はこんでいくんだ。イバラの茂しげみのところまで運はこんだらそこで網あみを茂しげみに投なげかけるんだよ。網あみはひっかかるけど、きみたちは大だい丈じょう夫ぶ、下したをとおって、それぞれ逃にげて行いったらいいんだ。」
話はなしを聞きいたむれのみんなは、「なるほど!わかりました。」と言いいました。

次つぎの日ひ、あのウズラとりの男おとこが森もりへやってきました。鳴なきまねにだまされてウズラたちが集あつまったところを、上うえから網あみをかけられてしまいました。
でも、そこで、ウズラたちは王おう様さまから聞きいた作さく戦せんを実じっ行こうしました。みんなでいっせいに、網あみの目めに頭あたまをつっこむと飛とび上あがりました。そうしたら、網あみを運はこぶことができました。ちょっと重おもいけれど、みんなで力ちからを合あわせて飛とべば、ちゃんと運はこぶことができました。イバラの茂しげみのところまで運はこんで行いって、そこでイバラに網あみを投なげかけました。網あみは茂しげみの上うえのところでひっかかっています。ウズラたちは茂しげみの下したから、それぞれ逃にげて行いきました。

ジャータカ第33話:和合ってだいじ

ウズラとりの男おとこは、網あみごと飛とんで行いってしまったので、どうすることもできません。イバラの茂しげみに入はいって網あみを取とるしかありません。しかしその仕し事ごとは、一ひと苦く労ろうでした。網あみはイバラにあちこちからみついていて、かんたんには取とれません。手てをイバラのとげにさされて痛いたい思おもいをしながら、網あみを破やぶかないように慎しん重ちょうにはずしていかねばなりませんでした。それにはとても時じ間かんがかかりました。すっかり日ひが暮くれて遅おそくなって、やっと家いえに帰かえることができました。ウズラはもちろん、一いち羽わもとることができませんでした。
翌よく日じつからも、ウズラたちはこの作さく戦を実じっ行こうしました。ウズラとりは毎まい日にち、イバラの茂しげみで網あみをはずすことだけで、とっぷり日ひが暮くれるまでかかりました。そのうえ、獲え物ものは一いち羽わもなく、手てぶらで帰かえらなければなりませんでした。

ウズラとりの奥おくさんは、家いえに帰かえって来きただんなさんのようすを見みて、腹はらを立たてました。
「あんた!いったい毎まい日にち、なにをやってるんだい。ここんとこずっと手てぶらで帰かえってくるじゃないか。仕し事ごとはどうしたんだい。どっかよそで油あぶらを売うってるんでしょう?! いったい、どこで遊あそんでいるんだい?」
と、だんなさんをどなりつけました。
だんなさんは奥おくさんにこう話はなしました。
「おいおい、おれはちゃんと仕し事ごとをしに森もりへ行いってるんだよ。遊あそんでなんかいるものか。それどころか、ひどいめにあって苦く労ろうしてるんだよ。ウズラどもは、おれが投なげた網あみを運はこんでいってイバラの茂しげみに落おとすんだよ。そうやって、みんな逃にげて行いってしまうんだ。おかげでおれは、手てをイバラのとげでさされながら、網あみをはずすのに夜よるまで大おお苦く労ろうなんだよ。見みてごらんよ。おれの手ては、ほら、傷きずだらけだよ。」

ジャータカ第33話:和合ってだいじ
「まあ、なんてこと。それで、一いち羽わもウズラをとれないってかい? それじゃあ、いったいどうするんだい。ウズラがとれなきゃ、私わたしらは食たべていけないよ。」
「ああ、大だい丈じょう夫ぶだ。おまえは心しん配ぱいしなくてもいい。
ウズラどもが結けっ束そくして力ちからを合あわせているから、今いまは逃にげられているがな、今いまに見みていろ、あいつらが、いつも和わ合ごうしているとは、おれは思おもわないぜ。きっとそのうちけんかして、争あらそいになるさ。和わ合ごうが破やぶれれば、一いち網もう打だ尽じんにして、かごにいっぱいウズラをとって帰かえってくるさ。おまえがにこにこ笑わらって喜よろこぶようにしてやるからな。」
奥おくさんは、「それじゃあ、楽たのしみにしているわ。」と、ごはんのしたくに行いってしまいました。男おとこは、「なに、早そう晩ばん、あいつらの和わ合ごうは破やぶれるさ。争あらそいごとは起おきるものさ。そうなりゃおれさまの思おもうつぼさ。」とひとりごとをいいながら、網あみの手て入いれをしました。

さて、それから数すう日じつがたちました。
たくさんのウズラたちがえさを食たべている時ときでした。一いち羽わのウズラがえさばに舞まい下おりていこうとして、うっかりだれかの頭あたまをふんでしまいました。
「おい、だれだ。ぼくの頭あたまをふんだやつは。」と、ふまれたウズラが腹はらを立たてました。
「あ、ごめんごめん。ついうっかり。」とふんだウズラがあやまりました。
でも、ふまれたウズラは気きがすみません。腹はらが立たったままでおさまらないのです。
「うっかりだと? そんなことですむと思おもってるのか。」とどなりました。
「うっかりはうっかりだろ。しかたないじゃないか。そんなにどなることじゃないじゃないか。」
「どなって当とう然ぜんだろ。ふむやつが悪わるいんだ。」
「うっかりと言いってるのに、そんなにどなるなんて、なんてひどいんだ。」
と、どんどんはげしくなっていきました。
まわりにいたウズラたちも集あつまってきました。
「ふむやつが悪わるい。」「いや、それぐらいなんだって言いうんだ。」「言いいすぎだろ。」「ちゃんとあやまれ。」「なんだその言いい方かたは。」などなど、みんなが言いい合あいを始はじめました。
言いい合あいはどんどん広ひろがり、はげしくなり、とうとう、ウズラのむれがふたつに分わかれて大おおきな争あらそいになってしまいました。

ジャータカ第33話:和合ってだいじ

王おう様さまウズラがやってきて、「争あらそいはよくない。争あらそいをやめよう。」とみんなに言いいましたが、頭あたまに血ちがのぼっているウズラたちは聞ききません。お互たがいに、「おまえがまちがっている。おれたちは正ただしい。」と言いってゆずりません。

王おう様さまウズラは考かんがえました。
「これは、非ひ常じょうに危あぶない状じょう況きょうだ。言いい争あらそいをする者ものには安あん全ぜんはないのだ。和わ合ごうが破やぶれていては網あみを持もち上あげることはできない。きっと、大おおきな破は滅めつにおちいってしまうだろう。猟りょう師しはそんなチャンスを逃のがしはしないだろう。こんなところにいては危き険けんだ。」
そこで、理り解かいあるものたちを連つれて、その森もりを去さって行いきました。

ジャータカ第33話:和合ってだいじ

数すう日じつ後ご 、ウズラとりがやってきました。鳴なきまねをしてウズラが集あつまってくると網あみを投なげました。
一いち羽わのウズラが、
「なんでこいつといっしょに飛とばなくちゃいけないんだ。へっ。おまえは網あみを持もち上あげると頭あたまの毛けが抜ぬけるんだってな。持もち上あげてみろよ。」
と言いいました。
もう一いち羽わは、
「ふん。おまえは網あみを持もち上あげるとき、両りょう方ほうの翼つばさの毛けが抜ぬけるんだってな。さあ、持もち上あげてみろ。」
と言いいました。
言いい合あいはたちまち広ひろがり、「さあ、持もち上あげてみろ。」「なんでおまえに言いわれて持もち上あげてやらなくちゃいけないんだ。」ともめているうちに、ウズラとりが網あみを持もって、ひとまとめにしぼって、たくさんのウズラをつかまえてしまいました。そしてかごいっぱいにつめこむと、ほくほくと帰かえっていきました。
「よし。これで今日きょう は奥おくさんをニコニコさせてやれるぞ。」と。

 

このときの賢かしこいウズラの王おう様さまは、前ぜん世せのおしゃか様さまでした。

 

 

おはなしのポイント

「和わ合ごう」とは、みんなで仲なか良くよ協きょう力りょくし合あって、やるべきことをやることです。

みんなの力ちからを合あせることで、大おおきなことも、なしとげることができます。
ひとりでできることは、それほど大おおきくはありません。
協きょう力りょくすることで、びっくりするほどの力ちからになります。
ひとりひとりではできないと思おもえることでも、和わ合ごうすればできるのです。

しかし、自じ我がをはってわがままな行こう動どうすると、和わ合ごうが破やぶれます。
わがままな人ひとがいることで、みんなの力ちからが小ちいさくなってしまったり、力ちからを出だせなくなったりします。

和わ合ごうがあると、その仲なか間まはうまくいきます。繁はん栄えいします。困こん難なんがあっても、のりこえることができます。
しかし、和わ合ごうが破やぶれると、破は滅めつがおとずれます。不ふ幸こうになります。

和わ合ごうをたもつには、努ど力りょくが必ひつ要ようです。
和わ合ごうをたもつポイントは、よく話はなしあうことです。よく話はなしあってみんなで決きめたことは、わがままを言いわずに、全ぜん員いんで実じっ行こうすることです。

(おしまい)

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