寺子屋スジャータ

しかえしをしたクンタニ鳥(ジャータカ 第343話)

再話:藤本 竜子
絵 :ただ りょうこ

2022/1/9開催 第17回オンラインこども仏教教室より

しかえしをしたクンタニ鳥(ジャータカ 第343話)

とおむかし、おしゃさまさつであったときのおはなしです。
さつおうさまとして、バーラナシーのみやこくにおさめていました。おうさまただしくほうにのっとって、こうせいせいをしていましたので、くにゆたかでへいで、ひとびとあんしんしてせいかつしていました。

さて、おうさまきゅう殿でんにはクンタニどりというとりがおりました。クンタニどりとくべつとりでした。おうさまがみはこぶというだいごとをするとりだったのです。おうさまがよそのくにおうさまたいせつがみとどけるときに、このとりはこぶのです。けらいたちにたのんでうまはこぶよりも、クンタニどりんでいくほうが、ずっとはやく、しかもあんぜんとどけることができました。クンタニどりは、そんなだいやくわりたせるほど、かしこくて、たいりょくもあり、つよとりでした。おうさまもクンタニどりしんらいしてごとまかせました。

おうさまはクンタニどりをとてもたいせつにして、きゅう殿でんなかにいごこちのよいをかまえるしょさいこうしょくようするようにと、くばっていました。
クンタニどりおうさまのことをしんらいして、おうさまごとをいっしょうけんめいにつとめていました。

このクンタニどりのひながまれました。クンタニどりは、それはそれはかわいがって、ちいさなひなたちをはねしたそだてていました。
そんなあるおうさまきゅうに、あるくにおうさまへあててがみおくらねばならないようができました。クンタニどりごとができたのです。クンタニどりは、まだえそろっていない、かよわちいさなひなたちのことが、とてもがかりでした。でも、おうさまだいごとですからかないわけにはいきません。がみあしむすんでもらうと、きゅう殿でんおうさまのベランダから、さっとそらがりました。そして、できるだけはやかえってこようと、かぜって、まっしぐらに、とてもはやんできました。

しかえしをしたクンタニ鳥(ジャータカ 第343話)

このクンタニどりのときに、かなしいできごとがきてしまいました。
たまたま、おうさまどもたちのうちのふたおうがクンタニどりのあるところへやってきました。ふたはそこで、ちいさなのひなをつけました。おうたちはめずらしいとりのひなをおもしろがってさわっていましたが、そのうち、かよわちいさなひなたちのくびをねじって、ころしてしまったのです。

しかえしをしたクンタニ鳥(ジャータカ 第343話)

ごとえて、おおいそぎでかえってたクンタニどりは、ひなたちのところへんできました。しかし、ぶんっているはずのちいさなひなどりたちが見つかりません。クンタニどりくるったようになって、こどもたちをさがまわりました。
ようやく、クンタニどりつけたのは、うごかなくなってしまったちいさなひなたちのなきがらでした。
クンタニどりはあまりにおどろき、しんぞうまってしまいそうでした。クンタニどりかいわってしまったように、なげきかなしみました。
それから、なぜひながんでしまったのかをたずねてまわりました。そして、ふたりのおうころしたことをりました。クンタニどりはからだじゅうのをさかだてました。はげしいいかりがこったのです。
いかにくしみとかなしみがクンタニどりをおそいました。からだなかでぐるぐるとうずきのようにおそろしいかんじょうまわっています。
「かわいいこどもたちをころしたあいつらを、このままですますものか。」と、クンタニどりこころなかかためました。

それからしばらくたったあるのことでした。
おうさまきゅう殿でんにはいろいろなどうぶつたちがわれていましたが、そのなかにトラもいました。とてもどうもうなトラで、けんですから、げんじゅうさくつくってちかづけないようにしてありました。
その、あの、ひなをころしたふたりのおうは、きゅう殿でんのあちこちであそんでから、トラをきました。ふたりがトラのさくほうあるいてくのをクンタニどりていました。
トラをけんぶつしているおうたちをて、クンタニどりにはふつふつといかりがこみあげてきます。
「こいつらはわたしのかわいいこどもたちをころしておきながら、こうしてのんきにきているなんて、ゆるせない!」
そのおもいをおさえることはできません。
「こいつらをおなにあわせてやろう。」
クンタニどりはそうおもいました。

クンタニどりんでって、おうたちを、そのちからづよいあしでつかまえると、さくなかのトラのまえに、ぽいとほうりげました。トラはがりがりとおうたちをべてしまいました。

 

トラにふたりのおうころさせて、クンタニどりは「わたしふくしゅうたした。」とおもいました。
そして、こうかんがえました。

わたしはもう、ここにんでいることはできない。ここをていかなくてはいけない。ヒマラヤのほうんでくことにしよう。」
クンタニどりきゅう殿でんろうとしました。しかし、とうとして、ちょっとまりました。
おうさまにだまってってしまうのはどうだろうか。おうさまにはこれまで、とてもになってたし、ずいぶんよくしてもらった。おうたちがやったことについて、おうさまめたいちもあるが、わたしおうたちをころしたし、おうさまはどうおもっているのだろう。
あのおうさまには、わたしはほんとうのことをはなしてからここをるべきではないか。」
クンタニどりはそうかんがえて、おうさまのところへき、すべてをけることにしました。

クンタニどりおうさまのところへくと、きちんとおじぎをし、こうはなしました。
おうさまわたしごとているあいだに、ふたりのおうさまたちがわたしのこどもたちをころしてしまいました。おうさまがおさまがたちゅうしていていただければ、どんなによかったかとおもいます。
わたしはふたりのおうさまたいするはげしいいかにくしみをおさえることはできませんでした。そのふたりをおなにあわせようとおもい、おうさまたちをトラにころさせ、しかえしをしました。
こんなことがありましたので、わたしはもはや、ここにいることはできません。
これまで、とてもたいせつにしていただき、おになりました。わたしきゅう殿でんります。」

これをいて、おうさまはこうはなしました。
がいをなしたものに、きみはがいをやりかえした。
クンタニどりよ、それでそのうらみはわりにしよう。
だから、るのはおやめ。」

クンタニどりはこうこたえました。
がいをなしたものとなされたもの
そのものたちには、ふたたびゆうじょうむすばれません。
こころがそれをゆるしはしない。おうさまわたしきます。」

クンタニどりこといて、おうさまはこうはなしました。
がいをなしたものとなされたもの
そのものたちにも、ふたたびゆうじょうむすぶことはできますよ。
おろものにはできないが、かしものならば。
クンタニどりるのはおやめ。」

クンタニどりは、おうさまはなしきました。でも、こころのなかくるしみをえることができないとかんじました。
おうさまおうさまがおっしゃるとおりとはおもいますが、わたしにはここにとどまることはできそうにありません。」
そうって、おうさまふくくおじぎをして、クンタニどりはヒマラヤへとっていきました。

 

おはなしのポイント

  • だれでもころされるのはイヤです。ぶんがイヤだとかんじることをだれかにたいしてやってはいけません。
  • イヤなことをされたひとうらにくしみをいだき、ふくしゅう、しかえしをするかもしれません。それにたいして、また、しかえしをすると、うらにくしみはずっとつづきます。
    こうれんしてつづいていきます。
  • がいをなしたひとがいしゃ)となされたひとがいしゃ)のあいだで、それまでのようにつきあうことはできるでしょうか。できないと、ふつうはおもうでしょう。
    ゆうじょうこわれてしまいます。
  • しかし、かしひとせいのある人ならば、こわれてしまったかんけいでさえも、また、きずくことができると、おうさまかたっています。
  • そのほうほうは、いかり・にくしみ・うらみをのりこえることです。あいたいして、いつくしみのちでゆるすことで、のりこえることができます。
  • ぶんがいをなしたあいをゆるすことはむずかしいことですが、いかり・にくしみ・うらみをのりこえることができるのは、まさにそのみちなのです。
  • それによって、ほんもののゆうじょうきずくことができます。
  • ゆるすことのできるひとが、じんかくしゃです。すぐれたひとです。

(おしまい)

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