寺子屋スジャータ

お指図屋(ジャータカ 第115話)

再話:藤本 竜子
絵 :ただ りょうこ

2021/10/10開催 第15回オンラインこども仏教教室より

お指図屋(ジャータカ 第115話)

とりさんたちのごとはなんといってもたべものさがしですね。
とりばなくちゃいけないので、おなかにたくさんためておくことはできません。いちにちじゅう、ちょっとずつべています。さえずりながら、ずっとべものをさがしてべています。

さて、これは、むかしむかしのおはなしです。
ヒマラヤほうに、あるとりたちがおおきなれでくらしていました。おしゃかさまはぜんでそのれのおさでした。

お指図屋(ジャータカ 第115話)

 

とりたちはそうげんもりべものをさがします。ちいさなべものをつけてはたべます。えないくらいちいさなものでも、ちゃんとつけてべます。
でも、やっぱりおいしいのは、くだものやおこめまめです。にんげんのはたけにはくだものやおこめまめがたくさんありますが、なかなかべることはできません。はたけにちかづくといはらわれてしまいますから。
にんげんは、はたけのくだものやおこめまめをぜんぶってってしまいます。そしてそれから、ふくろやはこれて、くるまにのせてはこんでいきます。そのときにちょっと、こぼれたりするのです。おおどおりには、そうやってこぼれたものがちょくちょくちていました。
それはとりたちにとっては、おいしいごちそうにありつくことができるチャンスだったのです。 

そのとりれにいちくちうるさいメスのとりがおりました。このとりは、おいしいものをべることがきできで、おいしいものにたいして、とてもよくばりでした。
でも、ほかとりつけたべものをよこりしたりして、ぶんよくばりなやつだとおもわれたらずかしいので、ぶんよくばりなことはかくしていました。よくばりであることはかくしていましたが、おいしいものはたくさんべたいのです。
このとりは、おおどおりで、そこにちているくだものやおこめまめべるのがだいきでし た。だって、はらもりでやっとつかるたべものよりも、おおごちそうでしたから。
でも、このごちそうをたべたいのはほかのみんなもおなじです。ほかのとりたちもおおどおりにやってきて、なにかちていないかとさがします。うっかりしていると、ほかのとりさきつけられて、べられてしまいます。

お指図屋(ジャータカ 第115話)
このとりは、「みんながこのおおどおりにやってきてべたら、私のべるごちそうがってしまう。おおどおりにほかとりたちがないようにしなくちゃ。」とかんがえました。
そこで、れのみんなに、こうったのです。
「あっちにおおどおりがあるけど、あそこはとってもあぶないですよ。すごーくけんです。ゾウがとおるし、ウマもとおります。ウシもとおります。ゾウやウマやウシがぐるまをひいて、ったりたりしています。おそろしいいきおいですから、あんなところでべものをさがしたりしたら、あっというまにひかれてしまいますよ。あぶないですからね、ってはいけませんよ。」と。 

お指図屋(ジャータカ 第115話)

 

それからいつでも、だれかがおおどおりのほうこうとすると、このとりはすぐさまんでて、
「だめだめ。おおどおりにってはいけませんよ。あぶないですからね。」とちゅうしました。
とりれのみんなは、かのじょのことを「おさし」とぶようになりました。
さしは、みんなにはおおどおりに行かないようにさししましたが、ぶんまいにちそこにって、ちているくだものやおこめまめべていました。 

あるのこと、おさしがいつものようにおおどおりをあるまわっていると、とてもおいしいそうなくだものがちているのがつかりました。はこんではけないので、とおりのまんなかでしたが、そのままあわててほおばってべていました。

お指図屋(ジャータカ 第115話)
そのときこうからくるまがやってくるおとがしました。おさしくるまることにづいて、ふりかえってたのですが、「まだまだとおい。」とおもいました。「いそいでたべてしまわないと。」とおもって、「もうちょっと、もうちょっと。」とべつづけました。 くるまはあっというまにちかづいてていました。おさしくるまのかげに、はっとづいたときには、もうおそかったのです。

お指図屋(ジャータカ 第115話)
かのじょつひまもなく、くるまにひかれてしまいました。

お指図屋(ジャータカ 第115話) 

とりれのおされのみんなをあつめたときに、おさしがいないことにづきました。
「おさしがいないな。さがそう。」 と、みんなでさがしてみると、おおどおりでひかれているのがつかりました。

お指図屋(ジャータカ 第115話)

れのおさはそのほうこくいて、こういました。

お指図屋(ジャータカ 第115話)
「おさしほかとりたちにさしして、おおどおりにくのをめておいて、ぶんはそこをあるまわって、くるまにひかれてしまったのだ。べものによくばって、んでしまった。」 

 

おはなしのポイント

  • ひとには「こうするべきだ、ああするべきだ」とうけれど、ぶんはやらない、ということはよくないことです。 
  • うこととやることがちがっていることもよくないことです。
  • しゃさまこと
    Yathā vadī, tathā kārī. Yathā kārī, tathā vadī.
    ちょうきょうてん(DN III p. 135.16–18)

    ぶんっているとおりにやりなさい。ぶんがやっているとおりにいなさい。
  • しんせつなふりをしてっていても、ほんとうはほかひとそんをさせるためのことがあります。
  • ひとことにはよくちゅうして、なんでもかんたんにのってしまわないようにしましょう。
  • しんよくがあらわれると、ただしいはんだんができなくなります。それで、しっぱいしたり、まちがったことをしてしまうことになってしまいます。
  • 「ひとりじめ」はよくばりです。
  • 「ひとりじめ」しても、とくにはなりません。
  • うこと、かちうことは、しあわせになるみちです。

(おしまい)

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